大樹町からお届け畑の真ん中だより
長雨と日照不足、更に台風3連発!深刻な状況でも前を向いて。
軟腐病大発生!
土壌分析に基づいた最適な土づくり、収穫時期を考慮した計画的な播種、手間と時間をかけた雑草抜き、良い芽を残す的確な間引き...よいものを作ろうと、日々努力をしてはいますが、どうにもならないのが「天候」。
毎年毎年、「数十年に一度の●●」という言葉が安売りされていますが、今年の十勝はまさに「数十年に一度の異常気象」。大石農産始まって以来ともいえる作況の悪さです。
原因となったのは6月の長雨と7月まで続く日照不足。さらに7月下旬から8月にかけての蒸し暑さで、土の中が高温多湿の状態が続きました。
そのため、通常であれば問題にならない小さな傷から菌が入り込み、栄養分の通り道を塞いで大根を腐らせてしまう「軟腐病(なんぷびょう)」が一気に発生してしまいました。
軟腐病の原因となる細菌は、どこにでもいる普通の菌。晴れて地面が乾けば、なんでもない菌なのです。
しかし今年の十勝はじめじめとした日が続き、病気の発生を抑えることができませんでした。
軟腐病にかかると、大根が腐ってとけてしまうため、出荷することができません。明らかに出荷できないものは、収穫段階で「ハネ品(規格外品)」として畑に捨て置きます。今年はその数がものすごく多い!
しかも、選果場に持ち込んで洗浄と出荷できるかをチェックする段階でも、ハネられるものが非常に多いのです!!
ある程度であれば「カット大根」として出荷しますが、それすらかなわないものが多数...。残念ながら廃棄となります。
選果場の様子。手前はカット大根のレーンです。例年より明らかに多い!!
例年であれば1日あたり1800~2000箱の出荷のところ、今年は1500箱の出荷がやっとです。畑で捨て置かれる割合も併せて考えると、歩留まりが相当悪くなっています。
現在の作況は、昨年を100とすると今年は60くらいではないでしょうか。
とどめは台風3連発!
8月に入り、なんと3つの台風が北海道に上陸しました。北海道で1年に台風が3回上陸するのは観測史上初とのこと。しかも「1週間で3つ」上陸したのですから、どのくらい異常気象か、お分かりいただけると思います。
特に17日に上陸した台風7号は雨風激しく、大石農産でも様々な被害がありました。
設備関連では、肥料や色々な資材を入れている倉庫のシャッターが全壊しました。加えて今年建てたばかりの重機用車庫の扉まで壊れてしまいました。
シャッターが全壊した倉庫。中央の鉄柱が曲がってしまったため、修理が困難です。
畑関連では、畑や家の周りの木が倒れ、枝が畑に散乱しました。最後に播種したときに掛けたマルチも吹き飛び、全て回収する羽目に。これから気温が低くなるため、芽を保温するため掛けたマルチですが、通常の露地栽培と同じになってしまいました。今後の生育管理に注意が必要です。
ソバ関連では、塩を含んだ風が吹き込み、塩害が発生しました。周りの樹木も含めて立ち枯れ状態で、茶色い風景になってしまいました。もともと6月からの日照不足で実入りが悪く、昨年を100とすると、今年は30~40という酷さです。
これからの天候の回復を願うしかありません。
塩害のソバ畑。向こうの木も茶色くなっていて、立ち枯れ状態です。
一番困ったのが停電です。
台風7号の暴風雨により、17日の17時半~24時ごろまで長い停電がありました。箱詰め作業が終わり、夕方から翌朝の出荷まで大根を保管しておく冷蔵庫ですが、入れた直後の停電で全く冷やせないのです。
庫内の温度が上昇すれば細菌が繁殖し、軟腐病になる可能性が高くなる...。停電はなかなか復旧せず、やきもきしました。
やれるだけのことをやる
3つめに上陸した台風9号ですが、上陸予定時間が朝の5時半と、ちょうど収穫時間に重なりました。どうするか考えた末、社長が決断を下します。
「よし、台風が来る前に収穫するぞ!」
通常の収穫作業は朝3時半ごろからですが、それを24時からに前倒ししたのです。
上陸前とはいえ、真夜中、強い雨の中の収穫作業です。いやがるスタッフがいてもおかしくありません。しかし実際は違いました。
「やりましょう!」と力強く答え、全員で雨の中、畑に向かっていきます。
投光器の明かりの中黙々と作業を行い、いよいよ雨風が強くなった午前3時まで収穫を続けました。
「『アレコレ準備したけど大したことなかったなぁ』っていうのが一番なんだよね。そのためにやれることは全てやっておく。そうすると不思議なもので、被害が少ないことが多くて。一種のおまじないだね」と社長。
それを経験で知っているから、社長の決断に異を唱えなかったスタッフたち。
一致団結したベストメンバーだと社長が認める所以です。
前を向いていく
今までにないほどの天候被害を受け「今年の作況は過去最低かも」と話す社長。しかしその目に憂いはありません。
「愚痴を言っていても仕方がない。そういう年もある、という勉強ができたということ。幸いなことに、これまでの数年間経営が順調だったので、各方面からの信用を得ることができたと思っています。よい時も奢らず堅実に経営し、コツコツと信用を積み重ねていくこと。これに尽きると思います」
やれることはやる。ひたむきに堅実に取り組む。
そうしていれば、必ず報われるときが来る―――。
「前を向いていきますよ」
そう語る社長の目は、とても力強かったです。
さあ、シーズン終盤に向けて、気合を入れていきましょう!